リユース・リファービッシュ事業のRinovasol社
ドイツでは、リユースという選択肢も盛んです。太陽光モジュールのリユース・リファービッシュ事業を展開している企業として、Rinovasol社があります。また、使用済み太陽光パネルを有効にリサイクルし、リサイクルした原材料を他の産業分野に転用できる革新的な技術を開発しています。現在まで、世界中で100 万以上に及ぶ太陽光パネルのリユース、リサイクルを行っているとのことです。
同社のソリューションは回収したモジュールを修理・改修して再度製品として出荷しています。「それにより、通常は廃棄する際に発電所オーナー側が費用を負担しなければならないところ、Rinovasolは太陽光パネルを買い取ることを実現しております。」日本法人も設立しており、「既に日本で約2,000枚の太陽光モジュールをリファービッシュした実績(同社プレスリリースより)」があります。
こうした「修理・改修」の動きは政府やEUとしても後押しがあります。
EU全体の動き、「修理する権利」とは
2020年3月、欧州委員会は「循環型経済行動計画」を発表しました。これは「欧州グリーン・ディール」および「欧州新産業戦略」の一部をなす新たな行動計画で、環境に優しい未来にふさわしい経済の実現、競争力と環境保護の両立、消費者の権利強化を目的としています。
一般的に、製品の修理を受ける上でハードルが高いと、消費者は修理よりも廃棄や買い替えを選ぶことになります。循環型経済にしていくために、「消費者の権利強化」を導入。「消費者が製品の修理可能性や耐久性などに関する情報にアクセスできるようにし、環境の持続可能性に配慮した選択をできるようにする。真の「修理する権利」を享受できるようにする。」としています。
太陽光パネルでも同様の可能性があるため、消費者の新たな権利として「修理する権利」を導入しました。製造事業者に対して、法定保証の対象か否かにかかわらず、一定の条件で修理を義務付けます。また、消費者の修理サービスへのアクセスを容易にするとともに、修理事業者への部品や必要情報の提供を製造事業者に義務付けるなど、修理・メンテナンスサービスの拡大を促進することで、新たなビジネスモデルの構築が目指されています。
リサイクル技術が前進、シリコンの再資源化
2022年2月、ドイツの研究所であるフラウンホーファーシリコン太陽発電センター( Fraunhofer Center for SiliconPhotovoltaics・CSP))は、太陽光パネル、ガラス、プラスチックや木材など、リサイクル事業で実績のあるドイツ国内有数の大きな廃棄物処理のグループ企業体であるReiling 社と共同で、ドイツ連邦経済気候保護省(BMWK)の支援を受けて、太陽光パネルのシリコン(Si)のリサイクル技術を開発したと発表しました。
これまで太陽光パネルのリサイクルに関しては、ガラスやアルミニウムフレームの再資源化は行われていましたが、シリコンの再資源化は技術的に非常に難しいといわれていました。太陽電池セルには、集電用の配線や電極、保護用の樹脂シートなどが密着しており、それらを分離することが容易ではないためです。
しかし今回、シリコンを再利用した高効率の「PERC太陽電池セル」の製作に成功したことは、非常に画期的であり、日本も学ぶところがおおいにあるでしょう。この事業が軌道に乗れば、太陽光パネルを構成するほとんどの材料の再資源化が実現することになります。
まずガラスや樹脂を分離した後にセルを破砕して直径1mm以下の細粒にします。
次に、薬品を使った化学的なエッチング処理で、裏面電極や銀(Ag)の集電線、エミッター層などを除去して、高純度のp型のSi細粒を取り出します。
そして、このSi細粒だけを基に金属Siのインゴットを製造し、そこから現時点の単結晶Si型太陽電池の主流になっているPERC型の電極構造の太陽電池セルを作製するといったプロセスです。
変換効率は19.7%で、「約22.2パーセントの効率を持つ現在のPERC型としてはやや低いが、古い廃棄されたモジュールの太陽電池の効率太陽電池よりは高い(CSPのプロジェクトマネージャー)」としています。また、製造プロセス中に市販の超高純度シリコンは追加されておらず、製造元に関係なく、さまざまなタイプのモジュールからシリコンをリサイクルすることが出来るということです。
なぜ重要原材料のリサイクルの重要性が高まっているのか
こうした技術が注目されるのは、環境面以外にも理由があります。それは、シリコン系太陽光パネルに関して多くを中国からの輸入に依存しているという現状があるからです。これは、日本や他のヨーロッパ諸国も同じ状況にあります。
国際エネルギー機関(IEA)は2022年に、太陽光パネルの主要製造段階での中国のシェアが8割を超えていると分析した報告書を公表しました。太陽光発電のサプライチェーン(供給網)に不均衡をもたらしているとして世界各地に生産を拡大し、多様化を進めるよう提言しました。
ドイツでも廃棄された太陽光パネルに含まれる約1万トンのシリコンが、ドイツのリサイクル市場に毎年投入されているという報告があります。この数字は2029年までに年間数十万トンに達すると言われています。
昨今の地政学的なリスクを鑑みて、国内で重要な資源を確保することが必要なのです。そこで欧州委員会は、重要原材料(critical raw materials:CRM)の安定的かつ持続可能な供給の確保に向けた規制枠組みを設置する規則案を発表しました。
経済的重要性が高く、供給上のリスクがある重要原材料と、そのうち特に戦略的重要性が高く、供給不足の恐れがあり、生産の拡大が比較的難しい戦略的原材料(strategic raw materials:SRM)を選定した上で、バリューチェーンの強化と、供給元の多角化を図ります。「2030 年までに域内消費量の 15%を域内産リサイクル原材料とする」という努力目標の設定が検討されています。
国内の業界団体では、目標設定と同時に、リサイクルされた重要原材料への需要を増やすためには、「最終製品のリサイクル原材料の含有量目標を導入することが必要だ」と指摘しています。
<参考URL>
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/03/5ba822c725506e14.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000083924.html
https://eecc.jp/2022/03/17/news-36/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR07DHH0X00C22A7000000/