【コラム】アメリカの最新動向、太陽光パネルリサイクル・リユースの取り組み

◆アメリカでも大きな関心を集める太陽光パネル廃棄問題

アメリカのテレビ・ラジオ放送局CBSが太陽光発電/風力発電からの廃棄物の問題を取り上げる(2023年5月1日)など、太陽光パネルの廃棄問題は日本と同様に大きな関心を集めています。

• CBS News : Wind blades and solar panels head for landfills after being replaced

国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が2021年に実施した調査によると、米国内の使用不能になったパネルの総量は2030年に100万トン、2050年までに1,000万トンに達する可能性があります。

放送の中でも、現在使用済太陽光パネルの90%以上は埋立処分されていることが明らかになりました。リサイクルの技術開発の促進とそれが広く活用されることが期待されている状況です。

◆4月、DOEの2022 年度 PVRD資金提供プログラムに10件を選定

2023 年 4 月 20 日、米国エネルギー省(DOE)はSolarcycle社に、高品質の金属および使用済みソーラーパネルから抽出された材料を回収するプロセスを研究するための150 万ドルの研究助成金を授与したと発表しました。

これは、DOEの 2022 年度太陽光発電研究開発 (PVRD) 資金提供プログラムによるものです。他にも9件の研究が選定をされています。この資金プログラムに授与された2,900万ドルのうち、1,000万ドルは超党派のインフラ法によって太陽発電システムのリサイクル・リユースを促進するために資金提供されます。

これらのプロジェクトは、太陽光発電技術のコストを削減し、強固な国内サプライチェーンを構築することで、2035年までに電力部門を脱炭素化するというバイデン政権の目標を達成するために、太陽エネルギー導入の拡大を支援します。また、材料のリサイクル・リユースを改善することで、耐用年数が終了した PV モジュールの環境への影響を最小限に抑えることを目的にしています。

◆廃棄された太陽光パネル内の貴重な材料の 95% を回収する技術を持つSolarcycle社

Solarcycle社は2020年に設立。現在の技術により、銀、シリコン、銅、アルミニウム、ガラスなど、廃棄された太陽光パネル内の貴重な材料の 95% を回収できます。シリーズA資金調達で3,000万ドルを調達し、1年で同社の総資金調達額は3,700万ドルとなりました。

2022年にNRELは、2040年までにリサイクル材料が米国国内の太陽光発電製造ニーズの少なくとも25~30%を満たすことができることを発見していました。

そこで、Solarcycle社とNRELは、2年間の助成期間にわたってプロジェクトを実施する予定です。この研究によって、太陽光発電用の金属と材料をより適切に回収および分離するための代替精製プロセスを開発およびテストします。精製された材料が国内の太陽光発電製造で広く使用されれば、今後の国内製造需要を満たすことが技術的に可能になります。

同社は、大手太陽光発電事業者であるAESと太陽光パネルでのリサイクルサービス契約を締結するなど、住宅、商業、産業 (C&I)、公益事業会社と協力して太陽光パネルを大規模にリサイクルしており、2023 年末までに年間 100 万枚のパネルをリサイクルできる能力を設置する予定です。さらに垂直統合型の先進的なシステムを開設する予定で、2024 年には、年間数百万枚のパネルを処理できるリサイクル工場が完成します。

pv magazineによると、最近の研究結果で、「太陽光パネルから得られるリサイクル可能な材料の価値は、2030年までに27億ドル以上となり、今年の1億7000万ドルから増加すると述べている」とのことです。

他にも、いくつか先進的な動きがあるため、ご紹介します。

◆We Recycle Solar、新たに設備を導入しリサイクル処理能力を拡大

We Recycle Solar は、2019年8月に設立、使用済みの太陽光発電(PV)パネルのリサイクルと再販売を専門とする企業です。アリゾナ州ユマにある施設は、国内最大の処理能力を誇ります。5月に、当施設にて、新たに設備を導入しリサイクル処理能力を拡大したと発表されました。

同社のPVリサイクル工場は、メーカーを含むあらゆるメーカーのパネルを処理することができます。 1 分間に最大 10 枚の速度でパネルを処理しています。これまでに50万枚以上の使用済みソーラーパネルをリサイクルまたは再販売し、2,300万ポンドの有害なソーラーパネル廃棄物を埋め立て地から転用してきました。

75,000 平方フィートのユマ施設は、リサイクルとリユースのために 7,500 個のモジュールまたは 345,000 ポンドを 1 日で処理する能力があり、1 年で 6,900 万ポンド (ボーイング 737 型機約 700 機分の重量) を処理できます。その能力を2028年までに4倍の年間5億2,200万ポンドに増やす計画ということです。

◆Sunrun、ESGレポートで太陽光発電のリサイクルと持続可能性のプロセスを強化すると発表

4月、米国の住宅用太陽光発電と蓄電のプロバイダーであるSunRun社は、2022年のESGレポートを公表しました。この中で、温室効果ガスの排出量を削減し、サプライチェーンのトレーサビリティを確保し、太陽光発電のリサイクルと持続可能性のプロセスを強化する計画を強調しました。

同社は、今年末までに廃止された太陽光パネルを100%リサイクルし、2025年末までにすべてのバッテリーとインバータをリサイクルすることを目指すと述べています。また、2022年には廃止されたパネルの85%以上が再配備されるか、またはリユースされると述べています。

このように、政府が資金提供をし、民間が技術革新や処理能力を拡大していることがわかります。他にも、メリーランド州ではPVシステムのリサイクル・リユースに関するワーキンググループが設置されるなどカルフォルニアやアリゾナといった州だけではない場所でも太陽光パネルのリサイクル・リユースの動きが広がっており、アメリカの動向は注目です。

<参考URL>
https://www.energy.gov/eere/solar/seto-fiscal-year-2022-photovoltaics-research-and-development-pvrd-funding-program
https://pv-magazine-usa.com/2023/04/14/solarcycle-solar-recycling-specialist-raises-30-million-in-new-funding/
https://www.energyglobal.com/solar/17052023/we-recycle-solar-expands-operation-in-arizona/
https://www.pv-tech.org/sunrun-focuses-on-emissions-supply-chain-and-recycling-in-2022-esg-report/

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